例えばチケット不正売買の問題。ライブ・エンタテインメント全体の状況を把握するためには、スポーツ界の各チームやクラブ、協会、または演劇界の劇団や劇場が構築しているチケッティングのシステムについても調査する必要があります。あるいは高額転売を防ぐ手段として、迷惑防止条例や消費者保護に関する法の改正、新たな法律をつくることを視野に入れるようになった場合、我々は何から手をつけ、どんな方々と交渉していくべきかも考えなくてはいけません。
例えば2020年の東京オリンピック/パラリンピックを前にした様々な課題。インバウンドのために日比谷公園の野外音楽堂を有効活用し、もう少し大きな音を出せるようにするには、公園法や東京都条例のどこに着目するべきなのか。あるいは海外から来たお客様に全国のフェスやイベントを含めた日本のライブ・エンタテインメントを、ストレスなく観ていただくためには、どんなシステムをつくるべきなのか。そういったことを先取りして調査研究するために、経済界や法曹界、国会議員の方々を含めて、業界外の人材にも集まっていただく拠点にできればと思っています。
すでに国会議員の方々の間では、ライブ・エンタテインメント議員連盟(石破茂会長)が始動しています。これまでのエンタテインメント系の議連は著作権関連や文化振興的なものでしたので、ライブに特化した議連の結成は画期的といえると思います。そういった中でラボの役割は、ライブ・エンタテインメント白書などの市場調査をお見せして、ライブ産業の市場規模と今後の問題点をきちんと共有していただくことなんです。売上や公演数の毎年の伸びを実際にデータで目の当たりにすると、議員の方々も「今はこれだけの規模がある産業になっているんですね」と理解してくださいますし、問題解決の必要性をリアルに感じていただけると思います。
やはり数の力というのは絶大ですので、我々はこの数の力を良い方向に利用して、大げさにいえば国の産業や文化のために寄与する道を模索できればと思います。以前であれば「国」「文化」といった言葉を使うのは、確かに大げさだったかもしれませんが、現代社会の中でライブ・エンタテインメントの占めている位置や、我々がこれからやらなくてはいけない役割を踏まえると、本当に大げさではなくなってきていることも事実です。