相馬:ライブについて現状の問題を挙げると、各地のプロモーターさんだけではなく、現在は放送や出版メディアの方々が主催するフェスも定着していますよね。お客さんにとってはライブを楽しむ機会が増えるわけですから、それ自体はとてもいいことだと思いますが、アーティストを出演させるプロダクション側からすると考えてしまう面もあります。メディア系フェスへの出演はプロモーション的に非常に有効とはいえ、これだけフェスが増えている現状では、そこから頭一つ抜け出してワンマンで集客することがより難しくなってしまう。日頃のメディアとのお付き合いを含めて、出演しなくてはいけないイベントが増え過ぎると、自分達の活動の主軸がどこにあるのか、どこで収入を得ていくのか、ポイントを定められなくなってしまうんです。
中西:よく話をするのですが、フェスとかイベントは、ライブにおけるベスト盤なんですよ。CDもベスト盤ばかり売れた時代があって、アーティストの存在がリスナーにとってより身近になったと思います。でも、乱発するのはアーティストにとって当然いいことばかりではないですよね。フェスについても、出演していいタイミングのアーティストと、むしろマイナスになってしまうアーティストがいると思います。少なくとも、とにかく出演すればいいという時代は終わったでしょうね。
相馬:完全に終わりましたね。フェス自体は今後も盛り上がっていったとしても、アーティストにとっては難しい時代に入りました。お客さんがお金を払って観る価値のあるライブ、アーティストを選別する時代に入ったともいえると思います。
中西:当たり前といえば当たり前のことですが、アーティストだけではなく、プロモーターである僕らも真剣に考えてライブを作っていかなくてはと改めて思います。ここ数年、プロモーターの間では、土日にライブの開催が集中していること、高齢化社会に合わせてライブの開始時間を早めることなどが議論されていますが、こういったこともライブの中身に魅力があることを前提にできないと、解決に向けて進んでいきませんから。
相馬:うちのアーティストで、今おっしゃった議論を当てはめると、まだ具体的な施策があるとはいえません。例えばサザンオールスターズにしても福山雅治にしても、本人達の意向とは別に、ファンのニーズに応えていくとキャパシティの大きい会場をチョイスしていくことになりますので、お客さんが足を運びやすい土日で、平日であれば仕事帰りの方も来やすい時間帯のライブになってしまいます。でも、5年後、10年後になると、メンバーと同世代のお客さんのことも考える必要が出てくるでしょう。いずれにせよ、これらの問題はアーティストとも色々と話をしながら、ファンサービスという視点で対応をしていかなくてはいけないと思います。