山崎:僕が若い社員に伝えたいのは、とにかくリスクを背負って仕事をして欲しいということです。やはりプロモーターはリスクを背負って仕事をしない限り、成長もしないんですよ。たとえサラリーマンでも、自分の存在を賭けたプロジェクトをガンガンやってみて、それでダメなら責任を取るという気持ちは必要なんです。キョードー東京でいえば、それが創業者のスピリットを継ぐことだし、リスクを背負わないと、仕事もつまらないじゃないですか。
宮垣:自分達に興行の責任がないと、会場で少しでも多く座席を作ろう、一枚でも多くチケットを売ろうという意識がなくなってくるんですよ。それと何かトラブルが起きた時も、知恵が出なくなってくる。たとえ数枚チケットの売上が伸びただけでも、その積み重ねで得たお金で、コンサートに関わる皆がご飯を食べているんです。そういう意識が、スタッフ全体との信頼関係につながってくると思います。
山崎:それは根本的に、興行の責任を持つのはプロダクションだという意識があるからですよね。
宮垣:構造的に各地域のイベンターはリスクを負わないし、最近はもともと負う必要もなくなっていますからね。興行の主体は、東京のプロダクションなり制作会社で、委託してくれるのは東京の同業者。そうなると自分で考えようとしなくなるんです。だから優秀な人材は、プロダクションが考えることを100%遂行できる社員ということになる。
山崎:現場のプロモーターにヘタに考える能力があって、意見をいうと、うるさいヤツだと思われるでしょう。これが難しい(笑)。でも、やはり「プロモーターはプロデューサーである」という気持ちを持って欲しいと思います。60歳を過ぎるとこういうこともいえますが、若いスタッフにはなかなか難しいんでしょうね。