ACPCの活動内容と取り組み音楽産業の発展に向けて

新型コロナウイルスの感染拡大により、特に大きな影響を受けているのがライブ・エンタテインメント産業です。ライブ産業は全国各地で文化振興の担い手となるだけでなく、60万人以上の雇用も生み出していると見られます。
ライブ産業は多くのお客様の移動・飲食・宿泊などの消費行動を伴うため、経済波及効果が大きく、近年の市場の拡大に伴い、各地域の文化・経済活動に大きな役割を果たしてきました。
しかし2020年には新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、ライブ産業は予定されていた膨大な数の公演を自粛。営業の機会を失った事業者は窮地に立たされました。
コロナ禍の長期化により、多数の関連企業やフリーランスの事業者の経営状況は極めて深刻です。このままでは各社の事業継続や、これまでの技術・歴史の継承が断ち切られかねません。

この1年、各地域でライブ・エンタテインメントの火をともし続けるために、プロモーターはどう取り組んできたのか。ACPC理事が語り合いました。

参加者

  • 中西健夫会長/ディスクガレージ
  • 伊神 悟副会長/サンデーフォークプロモーション
  • 鏡 孝彦専務理事/グリーンズコーポレーション
  • 清水直樹常務理事/クリエイティブマンプロダクション
  • 横山和司常務理事/ホットスタッフ・プロモーション
  • 若林良三常務理事/ウエス
  • 取材・構成:君塚太/撮影:小嶋秀雄

打開策がない中での対策
自治体やメディアとの連携
エリアプロモーターの一致団結

昨年の2月末から3月にかけて、新型コロナウイルス感染者の世界的な急増を受けて、世の中のムードが大きく変わっていきました。そういった状況を受けて、各エリアのACPCに加盟するコンサートプロモーターの皆さんが、何を考えてどう行動されたのか、振り返っていただければと思います。まず、名古屋・東海地区のプロモーター、サンデーフォークプロモーションの伊神さんからお話しください。

伊神ちょうど1年ほど前、昨年2月末(2月26日)の大型イベントの開催自粛を要請する総理会見を受けて、大型イベントのみならず、コンサートは一斉に延期、または中止にしましょうとなったわけですが、どの地域でも受け止め方に差はなかったと思います。ACPCの加盟社は、コンサートの全国ツアーを各地域で受け持つプロモーターが多いので、ツアー自体がストップしてしまえば、全国どこもやりようがなくなってしまうわけです。

東海地区での独自の動きとしては、在名のプロモーターと放送局、新聞社の事業部でまとまって愛知県と名古屋市に陳情に伺い、「中止になった場合、会場のキャンセル料はかけないでください」「キャパシティの50%制限が出た段階では、会場費も半分にしてください」などをお願いしました。それはすぐに受け入れてくださいましたね。

大阪からはライブ関連も含めて、コロナの影響下にある様々なニュースが伝わってきた印象があります。グリーンズコーポレーションの鏡さんに伺います。

大阪の場合は昨年の3月に入って早々に、在阪プロモーター8社の40代中心のメンバーが自主的に集まりまして、一旦すべて公演中止にはなってしまうけれど、再開に向けて何をすべきか話し合いました。マスクが品切れ状態になっているタイミングでしたので、マスクもちゃんと用意しなきゃあかんなとか、実際に消毒液はどれくらい用意すべきなのかとか、開催に向けての準備を進めていたんです。
ところが、だんだん雲行きが怪しくなってきて、4月7日に緊急事態宣言が出た後はピタッと動きが止まってしまい、このまま開催できない状態が続いたらどうなるのか、考えなくてはいけなくなりました。大阪でも、コンサートの中止によってどれくらいの損失が出ているのか、8社のメンバーがデータをつくって、当時の在阪理事会社で、5月の中旬に要望書を大阪府に提出しました。その際に3月の時点で準備していたマスクや消毒液を寄贈したんです。
大阪の場合、一番問題だったのは、4店のライブハウスでクラスター(集団感染)が出てしまったことです。僕らが普段公演を行っていたのは、そのうちの1カ所だけでしたが、やはり一般層に与えた影響は大きかったと思います。ただし、ライブハウス側がクラスターの件をすぐ、正直に報告したことによって、行政の皆さんも吉村(洋文大阪府)知事も「助けなあかん」と思って下さったようで、ライブハウスの支援のために、大阪府から1億4000万円の拠出が決まったんです。内訳は、1カ所70万円、200カ所まで。70万円は、無観客での映像配信を2公演実施したら、映像収録や配信用の機材を買うための準備費を出してもらえるというものでした。感染者数もある程度は減ってきた時期だったこともあり、そのためのキックオフイベントを6月7日に、BIGCATというライブハウスでやって、吉村知事も来場されました。

ライブの火を絶やさない努力が続けられたということですね。

メディアや行政の皆さんにご協力いただけたことが大きかったですね。プロモーター8社が話し合っていた輪の中に、FM802を中心に在阪FM3局にも入っていただいて、「こんな時こそ、感染対策をちゃんとやりつつ、大きめのイベントをやらなあかんとちゃうか」という流れになり、昨年8月8日、9日、大阪城ホールでのOSAKA music DAYS!!!の開催につながりました。その後、大阪府(大阪文化芸術FES)の主催で、10月10日、11日、万博記念公園でOSAKA GENKi PARKというイベントも行われました。今年に入って3月12日に、在阪ラジオ5社、6局に組んでいただいて、エンタテインメントを応援する番組「オワラナイ ウタヲ ウタオウ」を同時刻に、同内容でオンエアしていただけることにもなりました。
うちが1999年からずっとやっているRUSH BALLという野外イベントは、地元の方々と相談を重ねた上で、昨年も開催したのですが、お客さんにとっても出演者にとっても、決していい状況でできたわけではありません。スタンディングでやるにはやりましたけど、(ソーシャル・ディスタンスを保つための)網を場内に張って、網のところに間隔を空けてリボンをつけて、その前で立って観てくださいということにしました。ステージから眺めると、虫かごのようにも見えるし、田んぼのようにも見えるし(笑)、本当に申し訳ない状況でもありましたが、それでもライブの開催を絶やしてはいけないという気持ちでしたね。